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一方、収益性の低い不動産や自分で使う見込みのない不動産については、できるだけ早く自己の資産から切り離そうとするでしょう。
切り離す手段としては、単純に第三者へ売却する方法もありますし、不動産を証券化する方法もあります。
こうした動きが不動産の有効活用や不動産の流動化を進展させることになるのです。
不動産の市場化は、不動産に関する投資家への情報開示をこれまで以上に進展させ、投資家自らが投資判断できる材料を提供します。
また、市場化が進展する過程で不動産ビジネスの競争が激化するため、前段でも説明したように、不動産ビジネスに関係する企業は、サービスの付加価値向上やコスト削減を求められるようになります。
このことが結果的に不動産の収益性向上をもたらし、不動産を株式や債券などと並ぶ投資対象の一つとして成長させることになります。
市場競争が厳しくなるなかで、不動産所有者が自ら競争力ある形態で不動産を有効活用できなければ、その活用を専門家に委ねて、所有者は投資家に徹するという動きも生まれてきます。
このことは、不動産への資金の出し手(投資家)と運営者が分離することを意味します。
所有と経営の分離が、現実のものとなってくるわけです。
資金調達面の環境変化は、従来型の不動産ビジネスに資金調達面からの制約をもたらします。
一定規模以上の不動産ビジネスを展開するには、コーポレートファイナンス(企業金融)として金融機関から資金を借り入れるだけでは不十分となり、それ以外の資金調達ルートの確保が必要となります。
そのためには不動産投資市場を通じて、生保・損保・年金基金といった機関投資家や個人の資金を、不動産ビジネスに呼び込まねばなりません。
同時に金融機関からもアセット・ファイナンスの形態で、資金調達を図ることが必要となってきます。
戦後の不動産システムの変貌が進んでいることは、不動産投資市場という新しい市場の創設・成長には、当然ながらプラスに作用します。
特に不動産ストックの増加は、これまではあまり大きな問題とはならなかった建て替え・リニューアル資金の調達源を確保するという意味から、不動産投資市場の必要性を高めます。
また、住宅金融公庫が取り組む住宅ローンの証券化は、ローンの証券化商品を売買できる投資市場の存在が大前提となっています。
このように様々な環境変化が、不動産投資市場の成長を促す方向に作用しています。
こうしたなかで、投資市場の基盤整備も同時並行で進んでいます。
不動産の投資市場が成長するためには、投資対象となっている不動産(あるいは不動産証券)について、誰もが共通に理解し投資判断ができるようなインフラが整備される必要があります。
投資対象となっている不動産を詳細に調査するデューデリジェンス、収益力を重視した鑑定評価、投資リスクを明らかにする格付け、不動産投資のリスク・リターンを示す不動産投資インデックス(指標)といったものがインフラに該当します。
ここ数年でこうしたインフラが、かなりの程度まで整備されてきました(それぞれの項目の詳細については後章で説明します)。
個人を含めた一般投資家が自由に投資し、不動産証券を売買できる上場不動産投資信託(J-REIT)市場も創設されました。
これらのインフラ整備によって、不動産投資市場が一段と成長する素地が整ってきているといえます。
不動産投資市場の潜在的な規模それでは不動産投資市場の規模は、どの程度のものなのでしょうか。
まず、どこまでの不動産を投資対象に含めるかという点が問題となります。
賃貸ビルや賃貸住宅のみならず、ホテル、倉庫、工場なども含まれますが、これらの不動産すべてが投資対象となるわけではありません。
立地、規模、耐震性といった面で投資対象になりにくい不動産や、あくまで自社で使用することを前提としていて売却する意思のない不動産は投資の対象外になります。
投資採算に合わない不動産も、そのままでは投資対象にはなりません。
不動産投資ビジネスの時代このように投資対象となる不動産の把握そのものが難しいこともあって、残念ながら日本では不動産投資市場の規模を示す統計はありません。
各調査機関の定義、推計もまちまちです。
しかし、潜在的な市場規模(投資対象となり得る不動産の時価)という意味では、おおむね60兆円から100兆円程度とする意見が多いようです。
日本の不動産業全体の年間売上高は約30兆円ですから、市場規模としてはかなり大きなものであることがわかります。
なお、不動産投資市場が確立している米国では統計があり、 2002年9月時点の不動産投資市場の規模は4.63兆ドル(1ドル- 107円換算で495兆円)とされています。
ここで重要なことは、機関投資家(年金基金、不動産投資信託-RETT、金融機関など)がこのうち2.24兆ドル(240兆円)を投資し、全体の約48%のシェアを占めているということです。
これらの機関投資家は、まさに投資として資金を不動産で運用しているのです。
従って機関投資家が不動産の所有そのものにこだわることはないため、不動産が流動化しやすい市場となっているといえます。
また、米国の不動産投資信託(REIT)の資金の多くが個人投資家から集められていることも勘案すると、日本でも不動産投資市場を育成するためには、機関投資家と個人の投資市場への参画が不可欠であるといえるでしょう。
米国で不動産証券化が拡大したのは、証券化の素地となる不動産投資市場がもともと整備され、不動産が流動化しやすい環境にあったことが大きな理由だ。
米国の不動産証券化拡大のきっかけは不良債権処理とされているが、日本の不良債権処理のイメージ(低未稼働資産や虫食い地などの売却)とは異なる。
証券化利用の主な目的は、投資適格である不動産をいかにして値崩れさせずに大量に売るかということにあった。
そのため、小口化して流動性を付与することができる証券化手法が活用された。
不動産投資ビジネスの特徴ここまで説明してきたように、環境変化や不動産投資市場の成長が、必然的に不動産投資ビジネスの拡大をもたらしています。
それでは不動産投資ビジネスとは具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ここではまず、その特徴について整理します。
不動産投資ビジネスは株式や債券に投資するのと同様に、不動産を一つの投資対象ととらえて、不動産投資から得られる利益、キャッシュフロー(資金収支)を最大限にすることをめざすビジネスです。
そこでは不動産投資ビジネスにかかわる各プレイヤーが、不動産投資が「投資として」最大限の効率をもたらすように行動しなくてはなりません。
不動産投資市場に資金を投入する投資家は、自らの投資資金を最も有利に運用しようとします。
一方で、その資金を預かって不動産で運用する受託者は、投資家の目に適った運用をすることが求められます。
受託者は、不動産の取得・運用を最も効率的に実行するために、目的を達成するのに最もふさわしいプレイヤーを選定し、それらのプレイヤーに最大限の努力を要請しなくてはなりません。
例えば、あるビルを取得して運営するのであれば、設備管理や清掃をどこに任せるのか、テナント付けをするリーシングをどこに頼むのか、建物を建築するのであればゼネコンをどうするのか、資金調達はどこと組めば有利になるかといったことを、適切に判断しなくてはなりません。
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